ホテルに飾るテキスタイルアートを制作いたしました!




昨年から、長い長い時間をかけて取り組んでいた仕事が

今日やっとお披露目です。


ホテルの各階エレベーターホールに飾る、テキスタイルアートを全9階分担当させていただきました。


立地が深川という事で、日本の伝統文化や江戸情緒を継承する地であり、

さらに都心にもほど近く新しい東京ともクロスする街である事から、

建築プランが「日本らしい伝統的な美しさと東京の深みを表現するホテル」との事でした。


コンセプトを踏まえ、シャープな外観とインテリアデザインに沿うように、

日本の文様の中から鱗文様をベースに使い、構成しました。



2階-4階が赤。5階-7階が緑。8階-10階が青。

おおまかに赤、緑、青の色展開になっていますが、それぞれただ単色の濃淡だけ使用しているわけではなく、

何度も打ち合わせした上で複雑に調色し、イメージに合うように組み合わせて染色しています。


センターの縦長のテキスタイルが作品で、サイドは手漉き和紙の壁紙です。







上品で鮮やかかつ深い色を出す為、贅沢にシルク生地を使用しています。

染色は絵の具と違い、後から消す事が出来ないので(漂白してしまえばその限りではないですが、生地を痛めますし、生地自体の色も変色してしまいます。)

特に絹を使う時は一段と気を遣って慎重に作業を進めます。



インテリアデザイナーの方とデザインを練っている段階で、

壁紙の色が決定されましたので、サンプルを拝見しに壁紙屋さんのショールームに伺い、全体でまとまりが出る様にそのサンプルを元に

染料の色を計画して配合しました。


またこの壁紙というのが、職人さんが1枚1枚作っている手漉きの和紙で、色も毎回全く同じではないという特別なものでしたので、

染める色も何度も試行錯誤して、濃淡も含めて実験をしました。



表面に金箔銀箔が吹き付けてある(これも手仕事との事)

煌びやかな壁紙の間に飾られるので、

そのイメージに調和しつつ存在感を出す為にはただ単純な単色のグラデーションだけでは色の厚みが出ず、

いくら綺麗な色でも浅く見えてしまうと思ったので、

同じ色の濃淡の中にも少し違う系統の色も使うなどして、

壁面全体としてコンセプトに合うように制作していきました。


赤と緑の壁紙には金箔が使われていましたので、テキスタイルにも金箔を。

青の壁紙には銀箔が使われていましたので、銀箔を貼りこんでいます。

銀箔には、艶のあるものとマットなもの2種類を使用して、さらに奥行きを出しています。







ベースが鱗文様を取り入れた絵というのは共通ですが、

3色×3枚ずつ、同じ色の作品でも1点ものならではの違いが出るように、とのオーダーでした。

ですので色の配置をずらしたり入れ替えたりして、

それぞれ違った仕上がりになるようにデザインしました。


この直線的で幾何学的な要素が、フリーハンドでひとつひとつ作業していく事によって、

手仕事一点ものならではの線の揺らぎや暖かみを帯び、

今回いただいたお題にもマッチするのではないかなと考えました。

箔プリントも、厚くクッキリさせたものからわざと薄く掠れた表情のものまでと幅を持たせ、

色と同時にここでも濃淡、絵の立体感を出すようにしています。




今回の染色の手順を簡単に記しますと、

まず下地に極薄い色を乗せてから下描きし、それにそって糊でマスキングしていきます。

そして彩色→蒸して染料の定着と糊はずし。

今度は反転させた部分を染めたいので、1度目と違う箇所をマスキング→糊が乾いたら彩色→蒸し→洗い→色定着。

最後に箔プリント加工。


彩色の際、色はその都度乾かしながら様子を見つつ重ねていきます。それぞれ下の方の濃い色は、3度以上重ねてしっかり発色させています。

グラデーションは特に失敗出来ませんので、息を止める感じで集中します。


他にも細かくあげるととてもキリがない沢山の手順を踏んでいます!




今回の制作は、時間をかけて丁寧に取り組ませていただきました。

じっくりと向き合う事が出来ましたので、

なかなか綺麗な良い作品に仕上がったのではないかなと思います!

機会がありましたらご覧頂けると嬉しいです。






京成リッチモンドホテル東京門前仲町

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2019年3月19日グランドオープン